かさぶた
涙(ルイ)

ずいぶん長いことご無沙汰しておりました
その後お変わりございませんか

昨年は大量のクスリを飲んでしまい
あなたや他たくさんの方々に大変なご迷惑をお掛けしてしまいました

なかなかうまくこと死ねないものですね
なんて ごめんなさいませね
今のはほんのブラックジョークだと受け止めてください


この頃私はずっと 家族について考えています
どんな家庭でも それなりに問題を抱えていること
それくらいは私にだって判っているつもりですが
果たしてその家族・家庭というものに本当に幸福が存在しているのか
私にはまったく理解できないのです


    働かない パチンコ三昧 食っちゃ寝食っちゃ寝
    たまに仕事してきたと思えば大威張りで
    すぐに腹を立てては暴力に訴える
    大人にも親にもなれない 子供より始末がわるい


いったいどういう育ち方をすれば
あんなふうになれるものなのでしょう
何を見て聞いて感じたれば 
あんないい加減な大人子供が出来上がるのでしょうか
絶対にあんな大人にはなるつもりはないしなりたくもないですが
自分もやがてはそうなってしまうのでしょうか
いやもうすでにそうなってしまっているのでしょうか

できることならこの躰を流れる血液まるごと全部取り出して
洗濯機でジャバジャバ洗い流してしまいたいですよ
あんな人間の血がこの躰の隅のすみまで走っているなんて
いずれ間違いなく つま先から腐敗していくに違いありません
そんなどうしようもないクズの血が流れている私だから
きっとみんな その匂いを嗅ぎ分けて
誰も寄り付こうとしないのではないか
そんな考えなくていいことまで考えてしまうから
ホントまったくもってやれやれといった感じです


毎日毎晩 夢とも現実ともつかない
とても居心地の悪い夢ばかり見るのです
私を苦しめるあいつらが
平気で人の生活に踏み込んではめちゃくちゃにしていく
いいようのない怒りが込み上げて 
息をするのも苦しくなって
大声で叫んで 叫んだ声に驚いて目を醒ます
その繰り返しなのです


こんな話 あなたにとってはきっと
とるにたらない どうでもいいことでしかないでしょうね
いいえ 別に責めているのではないのです
ただ 誰かに聞いてもらいたかっただけなのですから

いつだって自分の気持ちはどこかへ置いてけぼりのままで
何もかもすべてあきらめてしまうことこそ処世術だと
そんなふうにいつもいつも 自分に言い聞かせ続けてきましたが
だけど本当はもうとっくに うすうすと感づいてもいるのです


思い出したくないのに思い出してしまうから辛いのだと
ずっとそんなふうに思ってきたけれど
本当はそうじゃなくて  そんなことなんかじゃなくって
そいつによって沸々と湧き上がる感情であったり
心が拠り所を失ってしまったり
どこへもぶつける宛もなく
結局は自分に向けるしかないやり場のなさだったり
眠ることさえ怖くなってしまったり
思い出すことによって何度も何度も痛めつけられていたんだということ
かさぶたをひっぺがえすのは己の爪ばかりじゃ決してないということ


つらい記憶がフラッシュバックしてしまうのは
もうしょうがないことなのです
思い出すつもりじゃなくても出てきてしまう
そんなの当たり前のことだったのです
たとえて云うなら 子供のころに習った掛け算の九九
繰り返し繰り返し復唱しては覚えていった
要するにあれと同じようなことなのです
経験してしまったんだもの
強く強く刻みこまれてしまったんだもの
忘れろと云われることのほうが無理な相談というものなのです


殴られた記憶が いまの私を殴りたおす
蹴り上げられた記憶が いまの私を蹴り散らす
酷い言葉が いまの私の存在を脅かす


もう十分でしょ 十分苦しんだでしょ
その重い足かせ そろそろ外してもいい頃よ


あの頃の痛みを思い出してつらいんじゃない
記憶の刃先が切り付けるのは
まぎれもなく今現在のわたし


まったく何かの罰かなにかのように
自分を痛めつけることに熱中していたのです
しあわせになることは罪なことだと
どこかでそう 思い込もうとしていたのかもしれません


しあわせになるのに 罪も罰も関係ないのにね
それでも私はずっと そう思い込もうとしていました


そういう思考のくせみたいなものが
最近になって ほんのちょっぴりわかってきて
だからかな前よりはずっと長く
心痛まないでいられるようになりました


ずっと自分が大嫌いでした
愛を求めて伸ばした手は撥ね付けられ
歩みよろうとすれば近寄るなとばかりに壁をつくられて
何をしても 何もしなくてもいつも余計者扱いで
どこにも拠り所のない自分が
大嫌いでした
もてあましてばかりいました
消えてなくなってしまえばいいと
ずっとそう思いながら生きてきました


だけど今日宣言します
私は私を引き受ける覚悟を
どんな情けない自分も決して見放さない覚悟を
ここに決めました、と


自由詩 かさぶた Copyright 涙(ルイ) 2012-12-08 09:34:25
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