かたちのないもの
AquArium

射し込む光に
身体を向けて
同じタイミングで
息を吸う、
ただそれだけの
仕草がやさしい
また目を瞑る

絡めていたのは指ではなくて
互いの古傷だったと思う
知らなくていいことを
そのままにして
確かな温度を上書きしていく、
覚悟
僕にはあるから

夜が運んでくる
頬を撫でる冷たい風も
一瞬で真っ白な朝が
新しい温度で包んでくれる
このまま、
じゃだめでしょうか

首すじにかかる
熱い息の湿っぽさや
鼓膜の奥で鳴る
心臓の音
速度は、
きみの方が速い

歪んでくる
表情を少し切りとって
目の奥に焼きつけていく
いつだって
きみを感じられる気がしている
月曜の朝



一週間が始まる
ページを捲っても、
終わりのない
秋から始まる物語を
日比谷線を待ちながら
描いている

背中のずっと先のデスクで
難しい顔をする
きみを、
左目の端っこから見る
だらしなさのかけらも
此処では見せない



毛布がまとわりつく
脚先のいたずら
季節さえ愛おしくて
子守唄みたいな寝息に
僕らの関係は許される
気がしている
土曜の夜



**
「お疲れさまです」
ありふれた言葉の色も
変化していく
朝の占い
みずがめ座までチェックする
引き返せない
分かりきっていて
「おはよう」
**



眠たい日曜の午後
きみの心音を右耳で聞きながら
かすんでいく視界が
とてつもなくやわらかくて
僕は永遠を
信じてみたくなる
信じてみたくなる


信じたいんだ



自由詩 かたちのないもの Copyright AquArium 2012-11-02 09:05:26
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