愛しいひとへ。
AquArium

そのくちびるが
どんな形で動いていくのか
最後まで見届ける勇気が、ない

今にも飛び出しそうな心臓
耳をすまさなくても聞こえる
生きている証

あたしの左肩は
心地良く鉛を背負う
いっそ温度さえ棄ててしまいたい

モスコミュールの
爽やかさも既に消えてしまう
炭酸よりも儚いゆめ

ー沈黙、
やめてね
現実がきちゃうじゃない

都合のいい世界で
永遠を信じてよ
せめて今はー

その指先が
示す未来にあたしは存在しているのか
遠くを見ることが、できない

絡めた手脚に伝わる
同じ体温くらいでしか
感じられない繋がり

静かに目を瞑り
寝息さえも聞こえない朝
あたしは呼吸を飲み込んだ

あまりにも
優しい顔をしているから
右手をそっとあてた心臓

ーもう、
世界は新しい
古くなっていく時間

虚勢を張り合って
いたとしても、
明日を信じてみない?ー

すべての
一秒先が怖くて
時間を止めてしまうのは、あたし

遅くなっていく
なにか悟ったような
あたしを見たあとのまばたき

知らないことが
不安より安心を
もたらすなんて、切ない

マルボロの苦ささえ
まるでなかったかのような
飄々と迎えにきた朝

ーもし、
気まぐれな淋しさが
またあなたを襲うとき

一番に思い出してくれたら
あたしの世界を
信じてみませんかー





あなたの世界を見てみたいです。


自由詩 愛しいひとへ。 Copyright AquArium 2012-09-03 23:32:18
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