鈍いいろ
遠藤杏

少しだけあと少しだけ青が足りないもう少しだけ呼吸するには

苦しくてひねる手元のボリュームはいつもなにかを拒んでるふり

悲しみの色水溶かして街中にゆっくり注ぐ犯罪行為

パレードの最後尾からおもむろにナイフ手にして歌う賛美歌

自慢げに取り出す絵の具をぶちまけて手っ取り早く絶望しろよ

濃紺の夜の絨毯ひろげたらキャンプファイアの準備するころ

赤い服着てビル街の隙間からそっと見守るベンチの会話

黒い爪かさかさになった指先を撫でるしぐさは夜に似ている

すれ違う駅のホームの少年のヘッドフォンからプルトニウムが

あまりにもかたむきすぎた階段をくるぶし使って登る水鳥


短歌 鈍いいろ Copyright 遠藤杏 2012-08-25 21:01:07
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