熱帯夜
AquArium




なにも変わらなくて
加速していく、
愚かさを携えて
滑らかな鎖骨の線を
辿っていく途中に
君を見失う

ねえ
熱くて
どうしたらいい

残らず全ての角度を記憶して
現像してみたい
不確かさを形にして
なにかひとつでも
確かさを感じたくて
切り取る瞬間

ねえ
なにが
映っているの

少し生えてきたヒゲ
時計の針は、
八回廻って
射し込む光の憎さに
少しばかり、
世界を恨んだ

沈んでしまいたい
二度と這い上がれなくても
窒息して、
最後の景色が君だとしたら
世界一幸せかも、
しれない

ねえ
接している
面と線が

ねえ
なぜこんなに
悲しいの

そっと
触れたくちびるの
湿っぽさがまだ
身体中を支配している
もう、
動けないよ

それでも、
目を背けずにはいられなくて
指を、
絡めた
じわじわと迎えに来た痛みの正体を
教えて

ねえ
嗤わないで
いいから、

ねえ
熱くて
どうしたらいい

すり抜けていく
あたしの言葉をぬるくする視線、
いらないのに
目を逸らさずにいる
あたしは
誰よりも弱い

肋骨を、
ひとつひとつ
なぞっていく過程に愛がないことも
まぼろしみたいな
触れあいに溶けながら
ぼんやり、理解している

ねえ
脈が速くなって
心臓が届きそうなのに

ねえ
どうして
まんなかは冷たいの

透き通るくらいの
細くて白い腕
もう、目を覚ましたくない
起き上がることを
本能が、
許さないでいる

あらゆる窪み、ふくらみ
その先にある血管に
あたしの血液を
流し込んで
ほら、
全身で震えてよ

ねえ
熱くて
熱くて
どうしようもない

どうせなら
ひどく噛みついて
派手に棄ててくれたら
この先の歩き方が
見えてくるのに、
残酷ね

ねえ、
どうしようもない





好きです





熱くて





ねえ
どうしたらいい
すべての思考

ねえ
置き去りの
ことばたち

背中に、
つけられた足跡が
粉雪みたいに
すっとなくなる、
儚さにただ
永遠だけを願う

ねえ
いつまでも
熱い

髪を、
掻き分けて眼を
踏み抜いた
突き刺さる、
切れ長の視線が
泳いでいて掴めない

ねえ
答えて
でも

ねえ
聞こえない
ふりをして

切り返す
身体の端から
蝕んでいく、
これまでの記憶
右肩に、
夢中で口をつける




(もう
誰の湿っぽさも
呼吸も温度も
なにもかも
いらない
いらないから
この瞬間に
殺して
じゃなきゃ
殺しても、
いいかな)




ねえ

軋んでいく
身体の重みと
こころの軽さ
確かなものが
見つからないから
目を、
伏せて
ひたすら、
ひたすら、
君を想う

ねえ

枕に顔を埋めた
はじめて
涙が
止まらなくて
声を上げて
叫んだ


自由詩 熱帯夜 Copyright AquArium 2012-08-23 01:12:05
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