シリウス
風呂奴

何度目かの冬に
シリウスが描かれた
星たちはどれも
夜空の冷たい汗
三日月に触れる風光が
黄金色の鞘を象って
空をまっすぐに横切っている
羊たちのレム睡眠は
雨露といっしょに
裾野でスヤスヤと揺れる
その昔
小さな足音で見渡した
冬の夜長
背筋を伸ばして
天空に
手のひらをかざしたことがあった
そして今
僕は20年を通り過ぎ
少しだけ夜空に近付いている
ありふれた体躯と
平均的な孤独を抱き
やつれたスニーカーを
淡白に夜風に響かせながら
異国の音楽に
鼻腔を震わせて
空白の多いスケジュール帳を
ぼんやりと眺めたりしている
追想と倦怠が錯綜する
ありふれた現代人
これから何を担いでみても
異なる冬の
同じ星座に たどり着くのだろうか
、、、何度目かの冬に
僕は手のひらをかざした
永遠に掬いとれない
一筋のスペクトルを
何度でも美しいと
思い出したかった


自由詩 シリウス Copyright 風呂奴 2012-08-12 13:34:09縦
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