自転車の目 
服部 剛

駅前の歩道を歩く 
僕の目線の先で 
吹いた突風に   
電信柱に寄りかかっていた 
自転車はがしゃん、と倒れた 

半袖のYシャツのを着た 
すずしい顔した中学生等は 
「直すとボクラが倒したみたいだから」
と言い、そ知らぬ顔で通り過ぎた 

僕もすずしい顔で通り過ぎようとしたら 
地面に倒れた自転車の顔が 
上目使いに助けを求めて、僕を見た。 

(ようし・・・「いい人」の演技をしよう) 
僕は道を引き返し、ささやかな勇気を胸に 
倒れた自転車に、近づいていった。 











自由詩 自転車の目  Copyright 服部 剛 2012-08-03 23:28:05縦
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