佐々木丸美を読みながら2012
松岡宮

/佐々木丸美を読みながら/いろんなことを思い出す/そういえばわたしもみなしごだったと/うん/そうだったはず/と/ひとりぼっちの窓際で/少女がムセイするとき/物語に飢えている/わたしは/自分が/こんなにも語りたいことに/気づいてしまった/わたしは/じつは〜〜だから/〜〜だって/暗黙裡に説明したい/暗黙裡にわかってほしい/わたしが/わかってほしいと思う形で/わかって/ほしい/

/東京/高層マンションのガラスに頬をつけて/ゴツゴツしている空の下/まだ見ぬお母さんわたしのことを見守っていてください/まだ逢ったことのないお父さんわたしに逢ったら抱きしめてくださいね/ご飯ですよ何度呼んだらわかるの/ご飯だぞ何度呼んだらわかるんだ/・/中学生デブだってわかられたい/中学生デブだって繊細なんですわかってください/わたしはこんなにもわかられたい!/つまり/わたしはいつだって被害者で/かわいそうで/いじわるなお姉ちゃんやお兄ちゃんにいじめられて/でも/ひとりくらいは味方がいて/自分をかすみ草にたとえることに無理がないほど儚げである/かのような/破綻をガムテープで補填したかのような/わたしの物語を/それにしても/腹減った/

/雪が降ってきた/駅前には待ち合わせの恋人たち/六時の鐘が鳴りました/粉雪に傘をさして/ひとつ/またひとつ/足跡たちが遠ざかってゆきます/赤信号だけがまぶたに熱い/ある冬のこと/それは中学生だったんです/お年玉の貯金が三万円あって/これで/家を出ようと思いました/おじさんに買われたかった/おじさんに買ってほしかった/でも/おじさんに買ってもらうには/どうしたらいいのか/わからなかった/翼を持たない中学生が空を飛ぶには/あまりに不便な時代だった/キヨスクでガムを買って/時計台をにらんで/誰かが自分をさらってくれないもんかと願ったけど/氷の女神が頬を撫でていった/だけ/・/これじゃ単なる「待ちぼうけ」じゃん!/駅員さんのグレイのコートに/雪が/ふわふわふわふわふわふわふわふわ/こら/どうしたんだい/おちびちゃん/なんて誰か年上の男性が/優しく頭を撫でてくれるような/夢/

/こら松岡ぼーっとするな!/・/突然/塾の先生がわたしを怒鳴る/国立高校進学コースだと/理科と社会もあったんだ/わかんないよ/眠いよ/あっ/塾の先生も/わたしのことを/そんなにも/愛してくれているのだわ/なんて/佐々木丸美を読みながら/いま思う/わたしは本当に物語がほしかった/そして/今でも物語がほしいのだ/松岡宮は四十歳/夫あり/で/わたしにTOM★CATのCDを貸してくれたお姉ちゃん/しかもわたしは壊して返した/わたしに自作PCを作ってくれたお兄ちゃん/しかも/それもわたしは壊して返した/猫の世話をしていたお父さん/しかもわたしが買った猫だったりする/そして/わたしのことをわからないまましんでいったお母さん/

http://youtu.be/pOXRC2iijE8


自由詩 佐々木丸美を読みながら2012 Copyright 松岡宮 2012-08-03 21:13:09
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