世界の絵本
服部 剛

遠い異国の丘にある 
旅先の宿で、軋む階段をのぼり 
入った部屋の開かれた窓から、身を乗り出し 
いちめんの街を見渡す 

日々背負っていた 
「悩み」という名の重たい荷物が 
ここではあまりに小さく見える 

やがて夕陽は地平に沈み 
ぽつぽつ灯りゆく窓には 
家族の影絵 

やがてとっぷり夜は更けて 
ふっふっと窓のあかりも 
消える頃―― 

そうして夜空の星々が 
しんしん奏でる宇宙そら合唱コーラスの 
響く頃―― 

あぁ世界は 
旅人の小さい掌には 
とても収まらない 
不思議な地上のメルヘンだ 

世の中の、笑と涙の全てを飲みこむ夜の闇で 
「今」も生成している 
数えきれない人々の幼い寝顔と 
明日という、それぞれの夢 








自由詩 世界の絵本 Copyright 服部 剛 2012-07-20 20:16:25
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