旅人の涙
服部 剛

「遠い異国の教会で、ステンドグラスの窓か 
 ら射すまっすぐな虹のひかりの中、人々は 
 棺に横たわる人に次々と花を置いていく。」 

「ノートルダム寺院に腰を下す詩人草野心平
 さんの胸底にぎゅりりと何かが突きあがり
 いかつい頬からぽたり、一粒滴が落ちた。」 

旅の詩集を閉じた後 
部屋のラジオから 
バッハのG線上の線上のアリアが流れ始める 

今頃どうしているだろう――? 
一月前、被災地の仮設住宅へ訪問した時 
僕等の詩の朗読とヴァイオリン演奏に 
ひとすじの糸が頬をつたった、Kさんは 

(窓の外の上空からぱら、ぱら、と雨がふる) 








自由詩 旅人の涙 Copyright 服部 剛 2012-07-14 23:29:27縦
notebook Home 戻る  過去 未来