夕焼けのあとは藍空
たりぽん(大理 奔)


また夏が近づいて
文字だけになってしまったあいつが
梅雨が穿った水溜まりで
湿った革靴に弾かれる
激しく、なにかにあこがれて
そう信じて為すことの結末を嘘とはいわないけど
積乱雲越しのまばゆい落陽が
明日が来ることのほんとうを
この頬にしょっぱく刻む
電停で路面電車に飛び乗るように
切符もなしで会いに行けはしない
文字だけになることは
そういうことだ
いつも同じ顔ですましている
その横顔はほんとうじゃない
薄汚れていても
嘘つきでも
涙もろくても
寂しがり屋でも
おまえのほんとうをカバンに詰めて
越えていきたかった
ずっとずっと
ほんとうのまま
いっしょに越えていきたかった

そんなに高いところで
笑うなよ






自由詩 夕焼けのあとは藍空 Copyright たりぽん(大理 奔) 2012-06-30 09:27:39
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