ブツブツ言いながら紅白
komasen333

お気に入りのアイドルグループの
ライバルグループしか出場しないことを
ブツブツ言いながらも
きみは紅白を見ている

口ずさめないヒットソング
古臭い大御所の歌謡曲
交互に流れてくる 年の瀬のデジャビュ
浸りながら1年を振り返る

きみと行った水族館
たしか、あれは春だった
金曜の夜だった
幻想的だった
あのときも、そう
きみはブツブツ言っていた
「なんでこんなに混んでるんだろ」
と、ヒトデに語りかけていた
それが可笑しかった

折り返しを迎えた紅白
合間の短いニュース
見たことのないアナウンサー
でも、よく見ると・・・
うん?
どこかで見たことあるような・・・
そう思った瞬間に着信
「今、NHKに出てるアナウンサーって
あの子だよな?」
と、早口で確認してきた同級生

(ああ、そうだ。そうだ)
久々の声は早々と途切れた
きみに
「このアナウンサーさ」
と、教えようとしたがやっぱりやめといた
なんかまた
ブツブツ言いそうだから

短いニュースが終わった
後半の
トップバッターはあのライバルグループだ

派手な特攻盛りだくさん
なんだかんだ言いながら
画面に釘づけのその横顔に
そっとキスした
ふいうちでキスした

ちょっと驚いた
ちょっと苛立った
表情がとってもキュートだった

色々あったけど
今年も幸せだったなとおもった。おもえた。


自由詩 ブツブツ言いながら紅白 Copyright komasen333 2012-06-13 22:19:36
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