思い出ナフタリン
komasen333

救いようがない場所に
気づいたらこんな場所に
バカにしていた当人が
バカにしていた対象そのものに

掬いようがない距離に
気づいたらこんな距離に
蔑んでいた当人が
蔑んでいた対象そのものに

お気の毒にと
愛想で付き合ってくれていた
2人称ではなかったけれど 
3人称というほど遠くない人々
ふと見渡してみれば
1人もいなかった 
もう、いなかった 
ここには
1人もいなかった 
いなかった いなかった

こんなはずじゃなかった
叫んでも知ったこっちゃない速度で 
相変わらずの針先
そんなはずじゃなかった
嘆くだけでは何一つとして 
思い出ナフタリン

母さん どうかいかないで 
父さん どうかいかないで 
数えきれない優しさ 
見返りもないのに届けてくれた 
どうか今夜だけは
どうか今夜だけは

上質ってほどでもない旋律なのに 
思い出ナフタリン 

バカにするだけバカにしてきたこの身体に 
じっとりといつまでも 思い出ナフタリン 

傑作ってほどでもない歌詞なのに 
思い出ナフタリン 

ただ蔑むだけ蔑んできたこの思考に 
じっくりといつまでも 思い出ナフタリン 

飛び乗るべきソファーがない 
思い出ナフタリン

寝転がるべきソファーがない 
思い出ナフタリン

ここにはない 
もう、ここにはない 思い出ナフタリン

押しつけるべきクッションがない 
思い出ナフタリン

押しつけるべきクッションがない 
思い出ナフタリン

その匂いがついたクッションがない 
もう、ここにはない 
もう、ここにはない 思い出ナフタリン


自由詩 思い出ナフタリン Copyright komasen333 2012-06-11 13:33:13
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