まぼろしの指揮者 
服部 剛

ある日、名指揮者は倒れ 
コンサートは(指揮者無し)で行われた 

ヴァイオリンもフルートもホルンも 
それぞれの奏者は皆 
無人の台の上にいる 
まぼろしの指揮者のうごきを見て 
それぞれの音を奏でた 

全ての曲目を終えた後の 
ひと時の沈黙 
客席から 
ホールの天井に鳴り響く 
無数の拍手の波 

帰りの電車に揺られつつ・・・  
いつしか見ていた夢の中の音楽会で  
僕はヴァイオリンを持っていた

無人の台に薄っすら見える 
まぼろしの指揮者の手に
ぴたりと静止した棒  

僕はじっと目を凝らし 
ヴァイオリンを、顎に構える 








自由詩 まぼろしの指揮者  Copyright 服部 剛 2012-06-10 00:00:03縦
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