バベル/交通便/伝書鳩競売会
高濱



「欲望がわたしの燃動機関なのです、言葉を失くした鸚鵡たちが、回転する眸を、彼の磔刑される翼の朱色に、捉われては墜落してゆきます。煉獄とはスクリーンに映された海の反射鏡なのです。」

贖罪が盲目にする罪の在り処を、代理磔刑人の署名の下に、贖宥状の印刷に輪転する工場は、二十六文字の福音記号である、彼らは口を揃えて言う、「約束は果たされない。」

愛の言葉を囁き交わす、その三姉妹の胴は繋がっており、紡績機の上に一輪の花が飛び廻り、ペーパーナイフに引き剥がそうとする、その運命の自動車の軌道から。

交通事故の十字路に四人の運転手が、裁鋏の羽根が飛び交う沼に沈めた、紳士の杖から青色の花の渦が生まれる。それは夢を呑み込むと、毒々しい斑色の糸切鋏を吐き出す。

肖像の半身は塗り潰されている。傍らには大輪の花束と雀蜂があった。腕が生えてくる鏡台と棚から、幾つものコインが見つかる。

衣裳棚の残像が部屋に浮いている。彼らはもう帰ってはこないだろうか?様々な道化人が靴を鳴らし、肉と果物の飽食を嘲弄した、あの棺桶は硬く、広がってゆく侭なのだろうか。

陶器製バレエ人形の両脚器が、幾何学模様の夢を見る嬰児を、居留地修道院の箱庭に繁殖させ、柘榴の知恵が燭台に灯るバベルに、理想国家に変革の自動車を走らせる。

「連続的新時代の反復を、既視観の眩暈に幻視する、形態類似学の蝸牛も、回転運動の象徴的力学が、不滅の歯車を夢想するために。」




短歌 バベル/交通便/伝書鳩競売会 Copyright 高濱 2012-06-03 04:03:49
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