信用金庫が開くまで
komasen333

あどけない魔法 途切れないで
手を合わせて祈った 
田舎のおじいちゃんのような空に

くり返す切なさを 
止めどない憧憬を
持て余した 
無限にあったはずの三年間を 
悔やんでも、悔やんでも

夏を終わらせるように 
宵闇が深まるほどに強まる雨足
何を物語ろうとしているのか 
こんな空なのに 
うっすらと見える月明かり
ほどなくして青白い
生まれたてみたいな顔つきした 
小さな小さなこの街

張り裂けたことは 
もう、数えきれない
両手の指を何往復しても 
とても、数えきれない

信用金庫が開くまで 
長めの朝食作り
慣れない手つきで 
五、六年ぶりに台所に立って 
味噌汁まで作って

信用金庫が開くまで 
長めの洗濯物干し
ゆったりとしたリズムで 
二、三ヶ月ぶりに陽光を 
全身に隈なく浴びて

信用金庫が開くまで 
やりかけのジグソーパズル
押入れから引っ張り出して 
埃をボタンチェックの袖で拭って 
息を吹きかけて

躊躇ったことは 
もう、数えきれない
両手の指を何往復しても 
とても、数えきれない

あどけない計画 破れないで
手を合わせて祈った 
田舎のおじいちゃんのような空に

くり返す虚しさを 
寄せては返す虚しさを
止めどない憧憬を 
ちらついて止まない憧憬を
持て余した 
無限にあったはずの三年間を 
悔やんで、悔やんで、悔やんだまま
持て余した 
無限にあったはずの四年間を 
悔やんで、悔やんで、悔やんだまま

信用金庫が開くまで 
あの信用金庫が開くまで
信用金庫が開くまで 
あの信用金庫が開くまで


自由詩 信用金庫が開くまで Copyright komasen333 2012-05-28 13:42:04
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