石像の息子
吉岡ペペロ



この王宮は大戦時ソ連軍によって破壊された

降伏後三ヶ月には

瓦礫のここでコンサートが開かれている

修復のあと疎開していた美術品が飾られ

いまは市民や観光客に開放されている

入ってすぐの大ホールには石埃の香りが冷えていた

つぎの広間に移る階段のよこに

いいからだをした少年がライトアップされている

この石像をつくったひとのことを思う

その思いが風になって

こちらの精神にそぞろ吹いてくる

ペストで幼子をなくした私が

天国で成長しているであろう息子を

この世に結ぼうと

一刀三礼で鑿をふるっている


携帯写真+詩 石像の息子 Copyright 吉岡ペペロ 2012-05-01 16:58:02
notebook Home 戻る