無題の為のコラージュ・2
高濱




ウォータークラウンに無数の鳥が止ると雫の中の樹木から複頭の馬が飛び出してくる。その蹄はまるでジェラルミンの様だ。

幽霊の合唱に終わりが来ると花粉の匂いが鼻を突き、香水壜の化粧棚から倒れ掛かる陽光が密室を黄金色に染める。


市街の自動車の列には二人の男が格闘している、片方の男は襤褸の纏い布、片方の男は背広、何処かから背広の男を呼ぶ声が聞こえる。

水底の麦を摘む人々の行列に収穫時は喇叭を鳴らし、小麦粉製粉場には石臼が置かれ、その周囲に双子の争論が展開される。

秤量壜の中のニトログリセリンが発火する、このような午後に鎮静剤の睡眠効果は有効であり、隣国もろともに百年の睡眠香に包まれる。


ヴァイオリンの車が回ると銃把の雀蜂が通行する門扉に、鉄柵状の茨が絡まる第五日目の、アポロンの頭が浮遊する証人台。

水車の扉が開閉する手帳の栞に船舶の手紙が伝い落ちる、その瞬く捺印に墓を掘る男たちが、栄光の足音を聴き逃すような喚問を。

自転車の紡錘器に糸を掛ける蜘蛛のシルクが採取され、幌付の衣裳を翻しながら馬車から飛降りる、十六世紀の沼地。




短歌 無題の為のコラージュ・2 Copyright 高濱 2012-04-25 00:35:05
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