虔十さん 
服部 剛

昔々、虔十さんという風変わりな男は 
ぶなの木の葉がちらちら揺れて煌くほどに 
もう嬉しくてたまらなくなり 

一枚々々の葉のひかりが 
自らの体内に踊っているかのように 
いつのまに、ぶなの木そのものになり 

からだ全体の発光する 
木のひとになった虔十さんは 
うすら笑いの口をあけ 
この世の畑を夢見ています 

今日も風に吹かれて 
やって来る虔十さんは 
この世の何処かに・・・あなたの前に
うっすら姿をあらわします 








自由詩 虔十さん  Copyright 服部 剛 2012-04-21 23:59:30
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