るるりら



01 目覚め 


ひかりを集めた 蛍雪時代は ほたるのひかりまどのゆき
ありふれたひかり啓蒙時代でもあった 蒙には盲の意味もあると聞いた
ひかりがないことを盲ということに怯えた人との
ゆきあいの空 廃線になった終着駅で 見上げる

鳥はさえずり 花が舞う
舞うように謳うように 
いま ひかりが この私に 確かに あふれてる
そだ ひだまりになって 大股で空を泳いぢゃお

ひだまり ここにありますよ
ありがとう ありがとう ありがとう

ひかりを失いかけた人の声の周波数が鳥
鳥啼く声す 夢覚ませ


02 つばめ

つばめが低空飛行で
私の鬱屈した空気を ひろいあげ
ひと飲みに飲み込んで どこかに持ち去った

巣には子供がいるのかしらん
ゆくさきをみれば
雛に 獲物を与えてる

嚥下嚥下嚥下 たべるのむたべるのむ
swallowing swallowing swallowing
むしゃむしゃむしゃ むしゃむしゃむしゃ
そら 日が昇る さあ もってこい 
もっと ほしい もっと もっと
見よ 明け渡る 東を


03 かもめ


暗い海に かもめが身をゆだねている
曇天の空に かもめが 飛んでいるのも見える
灯台は かえって かもめには不都合で
かもめは 死んだ人のこころの近くを飛ぼうとしている
生きた人の こころの近くをも飛ぼうとしている
嗚呼 雲間から 光が まっすぐに 何本も降りてきた
太陽は ふたつある 空と海に
かもめは ふたつから離れずに 飛んでいる
いずれは
空色栄えて 沖つ辺に



04 すずめ

すずめは時間によって声がちがう
わたしだって話すべきことが ちがうから
おはよう
たべようよ
あいしてるよ
すずめの言葉が解る気になった日
わたしはそれが ほんとうかは人にしか喋れない

けれど 人の言葉に溺れた日
掬ってくれるのは すずめのような ちいさな こころ
陰翳礼賛 闇のち光 さんさん
いつまでも 褥にはいられない

わたしには わたしの言葉があるはず
さあ 出発しよう 友を探して 
言葉は 高音域 迷いの無い声響く

帆船群れゐぬ 靄の中










ーーー追記ーーーーー
鳥啼歌(とりなくうた)を、それぞれの連の最後に引用させていただきました。
鳥啼歌(とりなくうた)とは 明治36年(1903年)に、新しい いろは歌(国音の歌)が募集されたときに。通常のいろはに、「ん」を含んだ48文字という条件で作成されたものです。一等には、坂本百次郎の以下の歌が選ばれ、「とりな順」として、戦前には「いろは順」とともに使用されていた鳥啼歌(とりなくうた)を、それぞれの連の最後に引用させていただきました。

とりなくこゑす ゆめさませ
みよあけわたる ひんかしを
そらいろはえて おきつへに
ほふねむれゐぬ もやのうち

鳥啼く声す 夢覚ませ
見よ明け渡る 東を
空色栄えて 沖つ辺に
帆船群れゐぬ 靄の中




携帯写真+詩Copyright るるりら 2012-04-17 09:35:01
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