(断片)昼夜逆転の現象学、名前だけ。
風呂奴

 コーラの泡で起床。長期休暇には睡魔の一団が、ツアーを組んでは1日に何度でも夢を訪れる。生活の極点は、浮気者なので、目覚めたら隣には昼の寝息や夜の寝返りが横たえられている。日によって不思議と器用に遊び分ける。だけど好きなのはいつだってお前だ。あぁ、昼と夜だけの二股生活。。

 夜に泳ぐ昼。男でも女でも、子供でも大人でも、キャリアでもニートでも、文系でも理系でも、レバニラ炒めかニラレバ炒めでも、新約か旧約かでも、エロ動画サイトの検索ワードから「清純」を選ぶ奴でも「黒ギャル」を選ぶ奴でも、そして人には言えない性癖の極地でも、あるいは詩人でもロックミュージシャンでも、実存でもセカイでも、船上でも深海でも、初恋でも失恋でも、わたしでもあなたでも、もう誰であっても。
 人の配列に気を取られ、告白の中身を忘れてしまう。だけど、今思うのは、夢中になることってのは、好きな対象に体温を覚えてしまうことなんじゃないかな。生活の一部は体の一部って感じで。風邪引かないように体温を維持することだけ、夢中であれたなら。

 星座に化ける太陽。昼間、太陽と名付けた巨大な空の微熱。夜になれば、星々に光のおすそ分け。季節が整える風の輪郭は目に見えないから、春夏秋冬の物差しで言葉の計算、詩の設計。やがて散り散りになった星粒たちが、昼に鳴るまで、狼たちは鳥の羽を食い散らかし、船の上の酔いどれ詩人が比較的安価なリキュール片手に黄金を語り出す。

 三日月は伸びた爪。だって、三日月は見方によってはだらし無く伸びた汚い爪って感じだから。だけど、たとえば風呂あがりの伸びた爪を思い浮かべてみて欲しい。湯上がりの透き通ってて光る爪、しかも美女の。酔いどれ舟はそこで転覆する。美人の驚愕すべき黒髪のなめらかさと、JKの豊潤な太ももや、小さな弾力の中に燃えるような夜を連想させる唇の可憐に出会った日には。そして、つむじはもはや古代文明の装飾品のようだ。美女イズライクミュージアム。


 コーラの泡で起床
 夜に泳ぐ昼
 星座に化ける星
 三日月は伸びた爪

 星たちの名前を、詳細を、光の長さを、知っていようがいまいが、きっと今夜の星空は綺麗なんだと思う。名前を知らなくて美しいもの、その名前を知ったとき、勝手に愛着を湧かせている。せっかく覚えた彼らの位置も、明け方になれば昼に溶けるけど。そして、もう朝です。だから、おやすみ。


自由詩 (断片)昼夜逆転の現象学、名前だけ。 Copyright 風呂奴 2012-04-07 03:06:21
notebook Home 戻る  過去 未来