十九歳
アオゾラ誤爆

ふとい指を
なめて
それを
アイラブユーの代わりにする

のみこめない薄い空気が
くるしくて
くるしくて
デパートの惣菜も
銀行の光も
万年筆の繊細な書き味も
わからない
わからなくなった

どこへでもゆける
たったひとりのあなたは
眠れない子どものようだ
覚えたての気もちを
疑いもせず眼差しにこめている
いとしいひと
いとしいひと

捨ててきた約束と
身を焦がした永遠の恋の
ひとつひとつ
そのすべてを
弔って
許してもらう
少女のわたしに許してもらう

別れるまでの道
手をつないで人混みをくぐる
ねえ今
おなじ部屋に帰って
おなじ暮らしを紡いでる気がする
そんなつまらないことをゆめみて
ひとりで電車に乗ったよ
今日も
そして考える
十九回目の春がくるまで
ふやしつづけた傷はすべて
あなたに見せるためのもの
だったのかなって
そんなことを

にがい薬と甘い毒の区別がもうできない
花のように鞄のように
いつのまにか抱きしめていた

いとしいひとは目の前
大人にはまだなれないから
ふとい指を
なめて
それを
アイラブユーの代わりにする




恋人へ


自由詩 十九歳 Copyright アオゾラ誤爆 2012-03-29 02:24:30縦
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