さそり座の女との遭遇
服部 剛
今、神保町の珈琲店・さぼうるで
赤煉瓦の壁の地下にある席で
珈琲をすする僕の目線の先の1階では
美川憲一・はるな愛・ノブシコブシの吉村さんが
おいしいナポリタンをフォークで
すくってしゅわっと湯気が昇っている
さきほど隣のテーブルの女の子が
「あ!美川憲一だ」と言うや否や
店内の客の目線の先が一つになり
咄嗟に鞄に、手を突っ込んだ僕は、自分の書いた
「あたらしい太陽」という本を取り出し、立ち上がり
地下と1階の壁のすき間から
右手をめいっぱい伸ばす
「あの、これ、さそり座の男が書いた本です」
「あらぁ、ありがとう
愛ちゃんこれ、さそり座の男が書いたんですってふふ・・・」
椅子に着席した僕に
地下と1階の壁のすき間から
もう1度、美川憲一さんはこちらを覗いて
「ありがとうございます」と丁寧に、会釈した
テレビカメラの回る間も
「あたらしい太陽」を大事そうに手にしているのが
なんだかとっても、嬉しかった。
僕は明日、この出来事と美川憲一さんの人柄を
職場の皆さんや詩の仲間に、ちゃんと報告しようと思います。
自由詩
さそり座の女との遭遇
Copyright
服部 剛
2012-03-20 23:30:16
縦