春の温床
佐藤真夏


その珈琲豆は挽かないほうがいいです その鉄のにおい
そのままでいてとてもわるい

この身には
どろみず色の牛乳紅茶が
湧きつづけていてとてもわるい

ひしめく指と指の間から
点々とにじみ出す
結露した わたしの所有する雨は
みちというみちをたどるように
手相に沿って
うごきつづける
海への入り口を捜しているのだろう
こんなにも泡立ち
ひかろうとする

前の春あたりに
溺れた渦のひと巻き
陽だまりを飲み込んで
閉じてしまった台風の目が
ひらくとしたらそこです


自由詩 春の温床 Copyright 佐藤真夏 2012-03-11 12:58:49縦
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