夢の部屋  
服部 剛

ある夜の夢の中で 
誰かの拳が 
木のドアをノックする 
乾いた音が部屋に響く 

テーブルの向かいに座った 
瞳の澄んだその人は 
(私はいつも共にいる・・・) 
と言ってすぅっと、消えた 

目が、覚めた。 
すでに台所に立つ妻が 
まな板に置いた野菜を 
とんとん刻む音が聞こえる 

  * 

今日という一日の中に 
必ずやって来るという 
夢の人 

毎日会う人の背後に 
初めて会う人の背後に 
透き通った面影で
姿を重ねている  

日々、目の前に現れる隣人の 
瞳の奥から聞こえてくる 
夢の中のあの声が―― 








自由詩 夢の部屋   Copyright 服部 剛 2012-02-18 23:59:18
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