なまえ、こおらせて
たりぽん(大理 奔)

さらさらとやさしいおとで
雪が全てを覆いつくそうと
冷たく白く、暗転の月夜で
ひと滴ずつ凍りついています

道端にうずくまり
街の中でこごえながら
凍ることなく頬をつたうものを
故郷の名前に埋めるのです

遠くの三連風車や
夜桜のように雪をまとった桜並木
嵐のように激しい稲妻が
雪起こし、とやさしい名前で呼ばれたりします

口に出してしまった名前も
凍ることなく頬をつたうので
私は、降り積もった雪にそれを埋めて
毎日、まいにち
粉雪がそれを深くふかく凍らせていくのです

雪どけの季節になれば
ゆっくりととけだして
桜を見上げるだれかの耳に
その名前は届くでしょうか
それが
鳥の鳴き声のようにきこえて欲しいと
やさしい鳥の鳴き声に

指先を息でとかしながら
暗転の月夜をふり仰ぐと
ひと滴ずつ凍結したものが
私の頬でとけだすのです
そして
粉雪がそれをまた
深くふかく凍らせていくのです






自由詩 なまえ、こおらせて Copyright たりぽん(大理 奔) 2012-01-28 21:10:45
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