十六時になったので
たりぽん(大理 奔)

十六時になったので
この川沿いのベンチから立ち去ろう
綺麗な夕日を
今日は見たくない
宮島行きの遊覧船が
けたたましく船着き場を離れてゆく

週末は車が通れない元安橋
センターラインを踏んづけながら
それでも
夕日の方向に歩いてゆこう
写真を撮る人はみんな望遠レンズ
ほんとうに近づくこともなく
思い出だけを切り取ってゆく

リベットだらけの本川橋を渡るころには
十六時六分
花屋の前で知り合いの女性とばったり出会う
同僚が風邪で倒れているので
食事を届けるのだという
「やさしいね」って手を振り

十六時十四分
横川行き電車をやり過ごすと
振り返ってボクは
バイバイってつぶやいてみる
言ってしまうと未練が残るのに
埋み火のぬくもり
信じていたくて





自由詩 十六時になったので Copyright たりぽん(大理 奔) 2012-01-14 16:50:40
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