スマホ(お利口な多機能型携帯電話機?)が犬橇を曳いてゆくね
あおば

                   111222




江戸城外堀を3ヶ月で掘ったエネルギーの蓄積が現在の日本にも潜んでいるのだと解説者は力説するが、大東京と大逢坂が鉢合わせする摩擦熱が蓄積されて次第に熱を帯び僅か3センチの電車のフランジを削っていくから、3ヶ月もするとレールも削れて交換しなくてはならないと新宿駅の山の手線の助役はぼやく。中央線は新宿←→東京間には踏切が無いのだと明治の卓見を褒めそやしながら電子レンジに冷や飯を入れ90秒間過熱する光景が火花を散らすように瞬いてクリスマスツリーの☆を少しだけ膨らましてゆく。上下開通した暁には夜行列車を無停車で通過させることが出来ます。100メートルを10秒3で走り抜けて日本新記録を樹立してその名を後世に残した名選手の走る姿を180文字以内で記せとの難題にも躊躇することなく取りかかる共通1次試験受験生の鉛筆の先は滑らかに摩耗し柔らかな軟曲線を描き紙の上から机上を走り抜けてその先はスマホの思うつぼの映像に託す。
かのようにして思うままに記すことが出来るのだとつい先年の偉業とも言えるかもしれない心得違いの受験生達が一列縦隊で犬橇を曳いて万年雪の吹きだまりもなんのその、富士山の頂上目指し、初日の出を拝む企てを企画する。参加するしないは自由だが、各方のスケージュールに狂いが出ない限りは、力試しに挑戦しても良いのではないかと、中年の塾講師は投げやりな調子で投げやりな企画書に目を通す。
橇を牽く犬だって、訓練しなくては積雪中突破などは覚束ないのだ。今日も天気予報とスマホの電池を確かめてから犬橇の訓練に出かける。外は吹雪いているが、それが少しも苦にならないように臆病な犬たちも加え入念に走らせて、馴らし、走ることが、橇を牽くことが楽しくなるように絶え間なく訓練する。








「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作



自由詩 スマホ(お利口な多機能型携帯電話機?)が犬橇を曳いてゆくね Copyright あおば 2011-12-22 23:34:44
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