はぶさん 
服部 剛

はぶさんは、いつも 
ぺっぺっと唾を吐く 
所構わずトイレになる 
介助しようと抱きかかえれば 
細い手足で、殴る、蹴る 

そんなはぶさんの細枝のような体が 
実は末期癌に蝕まれていながら 
痛みさえも忘れ果て 
寝たきりの病人にもならず 
一日、車椅子に座っている 

「認知症」と診断されても 
細い木の体に宿って
ぼぉ
と燃えるいのちの炎 

ほら、油断すると 
あごの下から小さい拳が、飛んでくる 
危うく顔を避けた次の瞬間 
「あたくしのおうちはどこお?」 
ふにゃりと笑って、僕に聞く   

 









自由詩 はぶさん  Copyright 服部 剛 2011-12-20 22:43:03縦
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