涙の泉 
服部 剛

生まれたばかりの娘が 
心臓を手術して 
暗闇に頭を抱える父がいる 

夫と別れた後 
アパート暮らしで 
幼い息子達を必死で育てる母がいる 

人はそれぞれ何気ない顔で 
日々を過ごしながら 
仮面を外せば 
胸底にひとつの 
あおい泉が湧いている 

それぞれの重荷を負い 
この坂道を歩むほど 
湧き出ずる不思議な泉よ 

彼等はきっと、互いの瞳をみつめる時 
胸底の泉の水がひかるだろう 
密かに反射しあう 
涙のように 








自由詩 涙の泉  Copyright 服部 剛 2011-12-07 23:36:38
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