アンテ

                       5時 @ハト通信

小さな石を握りしめて
空を見上げている人が中心にいます
そのまわりを
忙しそうにぐるぐる回っている人がいます
指の数をくり返し数えている人
棒で地面に線を書いている人
自分の位置を定義しようと
計算ばかりしている人
などがたむろしています
離れたベンチで独り泣いている人
樹の枝にすわって口笛を吹いている人
ぬいぐるみを紐で引きずっている人
中心から離れるに従って
人の姿は減っていきます
せっせと道を延長している人がいます
ボールを投げては
自分で拾いに走る人がいます
身体を小さく折りたたんで
じっと動かない人がいます
ついにだれもいなくなって
静かになって
足がくたくたになった頃
果てまでつづく石壁が現れます
人ひとりがやっと通れる穴のまえに
番人がいて
石を積む作業を止めて
仁王立ちになります
全力でぶつかってもびくともしません
しかたなく
石壁を拳で何度も何度も叩いて
ようやく外れた小さな石をひとつ
拾い上げて
中心をめざして引き返します
遠い彼方
人が点在しています
振り返ると
番人はなにもなかったように
穴の内面に石を積み上げています
それもやがて見えなくなります



未詩・独白Copyright アンテ 2003-10-19 22:00:31
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