掌の器 
服部 剛

生まれた時から 
小さい掌は、何も持っていなかった 

大人になるにつれて 
大きい掌は、様々なものを持つようになった 

やがて訪れる夜、掌は「闇」に覆われるだろう  

  * 

ある美術館に飾られた絵で  
「魂の抜け殻」になった人が 
魚の目で、こちらを視ている 
開いた両手を、空にして 

  * 

もし、人が一切を捨てた時 
目に映る日常に、残された 
ひと・ものに 
言葉にならぬ震えが伝わるように 
私は両手をそっと、さしだす    








自由詩 掌の器  Copyright 服部 剛 2011-11-10 23:59:29
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