渦巻き
アンテ

                      2時 @ハト通信


だらしない自分の状態に
ある時とつぜん気づいてしまった時
体のどこかにあるはずのボタンを探す
あたりにまき散らした
みっともないわたしの中身が
音をたてて
たちまちわたしのなかに整然と収まる
そんな不思議なボタン

掃除機のコードのように

鉄製の巻き尺のように

でもそれはたいていわたしの外側にあって
自分では押せない仕組みになっている

渦巻きの形
が収納によいのかもしれない
わたしのなかにも
ふたつあるせいだろうか
耳を澄ませていると
時々とてもいい考えが浮かぶ
慌てて掴もうとすると
たちまち見失ってしまうけれど

一定の早さでわたしを動かしつづけてくれる
そんなゼンマイに憧れた頃があった
なにもしなくても生きていけると信じていた
ねじを巻いたエネルギーと同じ量しか
ゼンマイは仕事をしない
だなんて
だれも教えてくれなかった

体を丸くする
渦巻き
の形を真似ていると落ち着く

カタツムリのように

立体駐車場のように

思いもしない時に
だれかがスイッチを押してくれることがある
綺麗に収まってしまった後
淋しくなるのは
わたしがまだ完全な渦巻きでないせいだろうか

一刻も早く
渦巻きにならなければ

何度も何度もボタンを押さずにはいられないくらい

何度も何度も中身を引っぱり出したくなるくらい




未詩・独白 渦巻き Copyright アンテ 2003-06-18 00:49:56
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びーだま