缶蹴り
佐藤真夏

秋空に寄りかかる鱗雲が
開け放たれた海の際までずり落ちて
きみが咳込みながらズボンを降ろすのを見ていた
秘め事はスライドガラスに貼り付けて
食べきったトマトの缶に詰めてある
きみと
初めて手を繋いで眠った夜がカチャカチャ鳴って
顕微鏡を覗くわたしの目はきゅうと締まった

どこからか
なみだの玉が転げ落ち
レンズの上でくるりと回って往生し
すやすやと眠るわたしたちは
                      海の底
しあわせそうに
ふやけていった



自由詩 缶蹴り Copyright 佐藤真夏 2011-09-29 02:17:25
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