せんせい
蒼木りん

喉が渇く

先生

あなたを
思い出すたびに

もう思い出さなくていいと思う

盲目のまま
「すき」なんて言ってしまったこと
いまは後悔している

知るほどに
嫌いな男だった

先生

あなたは
不良だと仰っていたけれど

都合よく秘密を持つことで
危うさを渡っては
満足しようとしていたのでしょう

そんなもの
薄笑いが漏れてしまう


先生

どんなにステータスが上がっても
人が欲するものの果ては
所詮
動物の嘗め合いなのかしら

どうやら
羨望というものが欲しいらしい人間は
自分のことしか考えにないみたい

昔にはあった言葉の意味の確かさは
いまは
あやふやでこころを注ぐ甲斐がない

つかまるものが無くて
もがくのも
とうに忘れたでしょう

流れに呑み込まれても
死ねやしないから

どいつもこいつも
あなたも
わたしも

仕様がない
歯痒さの中で


先生

あなたはいま
やっと教師に戻れたのでしょう

放課後の空虚の廊下を
サンダル履きの足を引きずって

ただのおじさんに
毛が生えた程度のもの


先生

あなたは
天職を目指し
叶えたのだもの

喉なんて
乾かないでしょう






未詩・独白 せんせい Copyright 蒼木りん 2004-11-20 00:43:52
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