混沌
岡部淳太郎

こうしてまた
私は還ってきた
別の混沌から
元の混沌へ

この世はただ混沌が
現象するだけの場所
あの世ではすべてが絶対的に
整理されている

  (おそらくそこに、)
  (天国などというものはないのだが、)

そこに行った者は
残った者の今後や
先に渡った者の行末について
それなりに心配していたらしい

その者は
私のように還ることなく
灰となって行ったきりで
もう目には見えないのだが

それでもいつまでもつづく
迷子の時代
やがて混沌が整理される
風葬の春を思い描いて
私はなおも積極的に
迷いつづける

別の混沌はいまも
意味なく現象し
私の中の元の混沌は
多くの子どもたちの夢を代りに見ながら
昨日や明日と
変らずに今日も
現象しつづけているだけだ

こうしてまた
内と外の現象が
波となって押し寄せる
その力に揺れて
落ちる葉がある

  (それは決して、)
  (果実などではなく、)

私は還ってきた
そして私じしんの
心の中にゆっくりと坐って
これらの混沌の現象の中から
宇宙が幼かった頃の声の残響を
探し出そうと
しはじめる



(二〇一一年八月)


自由詩 混沌 Copyright 岡部淳太郎 2011-09-07 18:38:16縦
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