八月にうたう
茶殻

毎日せんそうやってたんだよな、と
黙祷のかたわらでぽつりと確かめる
ルービックキューブにたとえるならば
3つの面の色が揃ったあとで
あの黒い雨が降ったということだそうだ
おもちゃに喩えられる戦争の
知りうる限りの数字の中に
ぼくはいない
黒い雨の黒さも暗い月の影にしかいない
戦没者として僕は弔われないし
今日ぼくはあなたのために死ねない
明日ぼくはあなたのために死ねない
あなたの顔が小奇麗になっても
ぼくに差し出せるのはわずかなアルミニウムしかない
祈られた空を縫い合わせるひこうきの
その手術のあとは
季節をやぶる矢のように
あの雨のしずくに濡れた五線譜をばら撒きながら
フェードアウトしていく


自由詩 八月にうたう Copyright 茶殻 2011-09-04 16:40:03
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