つちにうまる/TOMURAI
ゆうと


ぼくらがまだ人間になるまえのはなしだ。
うそつきばかりがいるから、みんなだまされるし、だますこともへいきで、
みうしなってしまったのだろう。
とむらう、とむらう。
なぜぼくらは人間にうまれたか。
虫でもよかったじゃあないか。木でも。犬でも。猫でもない。
人間とはなにかを考えたところでべつに答えもうまれなかった。
ぼくは無駄なことを考えている。暇なんだろう。
しかし突然ばったりと人は倒れた。死んだのだ。
さっきまで生きていたものが、死んだのだ。
なぜだろう。生きているものはいつかかならず死ぬらしい。
なのになぜ、ぼくは生きているのだろう。いま。
未来へとつづいていっているようにみえて、過去にしかならない、いま。
あ、ぼく、生きていたんだ。
そうか、生きていたのか。
やあ、おはよう。こんにちは。こんばんは。
ぼくは虫を潰した。殺した。死んだ。
あれ、ぼく、生きているのか。
人間というかたちは、どこから呼んできたのだろう。
やあ、おはよう。こんにちは。こんばんは。
とむらう、とむらう。
生きているからね。
とむらう、とむらう。
生きていたからね。
ぼくは残酷なことをしているのかもしれない。
でもそれはぼくだけじゃないからゆるしてもらっている。
いや、おかしいよ。
ぼくも虫とはかわりないかもしれない。
だからいつか潰されるのかも。殺されるのかも。
そうか、死ぬのか。
彼は、死んだのか。
涙いっぱいためてなんのためになるのかわからないけど花をおくってぼくらは
とむらう、とむらう。
生きているものの儀式だ。
とむらう、とむらう。
かなしみをいっぱい吸い込まなくちゃ、生きていけないのだ。
きっとぼくらが人間であれ、虫であれ、木であれ犬であれ猫だとしても
死はさびしく、かなしいことだ。
そう、安心していたいね。




自由詩 つちにうまる/TOMURAI Copyright ゆうと 2011-08-12 20:40:33
notebook Home 戻る  過去 未来