朝・七時五十三分
たりぽん(大理 奔)

ちーちゃんの誕生日の朝
いつものように洗濯機のスイッチを入れる
昼前には電話をしよう
生まれてきたことをお祝いする日だ。


  ぽかんと夏空がおおいかぶさり
  蝉は式典に関係なく鳴き続ける
  赤いコーラ缶片手に
  短パンを履いた外国人観光客が
  爆心地を写真におさめる
  言葉だけでは救われない傷が
  みどりの心臓には刻み込まれている
  通勤で毎朝見かける朝の清掃
  公園は綺麗になっていくのに、
  だのに、世界はどうだ。
  やりきれない体温で乾いていく
  カサカサと
  折り鶴が風に音を立てる
  繰り返す、哀悼の音だ


今日はちーちゃんの誕生日
妙に蒸し暑いよるのせいで
汗をたっぷり吸った下着を放り込むと
いつものように洗濯機のスイッチを入れる
服が綺麗になった分だけ
水が汚れていく
生まれてくることだけが抗える
届かなければつなげばいい
蝉だって鳴くし、ネコだって鳴く
そして
ボクだってなくのだ

昼前には電話をしよう
そして、未来の話をしようよ



自由詩 朝・七時五十三分 Copyright たりぽん(大理 奔) 2011-08-06 08:59:00
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