擬宝珠
あおば

                 110716


ギと鳴く虫か
やりかけの画像が
ぎごちなく
振り出しに戻ると
好くない知らせが
虫の息で横たわっている
凡人には感じられない
寂しい風景が描かれ
通り過ぎる男達が目を背け
配達請負人を呼びとめ
支払期限を延ばそうとする
地デジの天下になり
意味あるものが映らなくなった頃に
横柄な回収車がやって来て
有無を言わさずに連れて行く
うっすらと埃の跡が残り
台風の訪れを待ちわびる
吹き飛ばされて
跡形もなくなるのを願っているのか
大雨に洗い流されるのを期待するのか
ザーザーいう音のなかにも
ギとかボとか聞こえないかと
耳をすまし
擬宝珠と改名しようか
考える


自由詩 擬宝珠 Copyright あおば 2011-07-16 17:41:15
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