杞憂
あおば

                 110713


相済みません。
タイトル提示を一日間違えてしまったようです。
不手際を心からお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。
粗忽者とは知ってはいたが、今回のは弁解の余地がないようだ。
腹切ってお詫びとも考えたが、それは近所迷惑だし、歓迎する人は何名いるか、
とんまな奴が、迷惑を掛けて、尻ぬぐいもしないで、あの世に逃げたと叱られるだけだろう。恥を忍んでこれからも身を謹んで生きていくのだ。好意的な意見だけを懐中に手ぶらで外に飛び出した。

気づいたら広々とした水田地帯に居た
飛び出してから何日、何時間経ったのか分からない
喉が渇き腹が空いているのだけは確かなようで
暑いので唾を飲み込む余裕すらなくなった
水が飲みたい
なにか食いたい
食えるならば
木の根を掘っても囓りたい
木の芽を摘んでも囓りたい
とぼとぼと
ずぶずぶの沼地のような水田地帯の畦道を行くと
遠くで蛇が何匹か寝そべっている
無表情にこちらを見るから
久しぶりの獲物だと
気づかないふりして近づいた
稲株の近くではトノサマガエルが息を止めてじっとしている
蝸牛も気づいたのか動きを止めた
空にはトンビがけだるそうに旋回するのみで
日が陰っても知らん顔
枯れ枝を探すが見つからない
小石もない
ここは整備された水田地帯なのだ
ベルトを外し
ヘヒの頭を目掛けて一振りしたが
2寸程外し
蛇は稲の株と株の隙間をシランフリして抜けて行く
蛇以外にも
手近なもので食えるもの無いか探したが
足下の蚯蚓くらいだろうか
素手で掘るのは嫌だから
なにか掘るものはないかと探したが
小石がひとつあるだけで
割れたかわらけ一枚無い
田圃の中にはタニシがいないかと
目をこらしたが
生きものは見えないようで
ザリガニがいたら大喜びするのだがと
残念に思う
ウナギはおろかナマズもタウナギも雷魚もいない
産卵に訪れる鯉も鮒も居ないようで
オイカワも泥鰌もハヤもカダヤシすらいない
日は中天にさしかかり
雲が切れた空からはこれでもかというくらい熱い光線と
目には見えない紫外線が降りそそぎ腕がひりひりする
みるみるうちに身体から生気を奪って行く
喉が渇き
食欲も失せて
立っているのも辛くなる
遠くを快速電車が轟音を立てて通り過ぎる
エアコンの効いた窓は閉め切られていて
別世界の住人を運んでいるのだと宣言している
財布の中身は空ではないが
コンビニはおろか販売機もない
納豆売りも豆腐屋もアイスキャンデー屋も通らない
トコロテン屋が来るとしたら
それはテレビの撮影の為だけだろう
無慈悲な仕打ちを受けているような気になって
手持ちぶさたのまましばらく呆然としていたが
ケータイがあるのに気付き
ケータリングサービスを利用しようと考えたが
今すぐには間に合わない
少し乾いた草に座り
力無く東の空を見ていたら
大きな赤い物体が静かに現れて
こっちの方に向かってくる
アレが噂の大隕石かもしれないと思ったが
呑み込むには熱過ぎるし噛み砕くには堅すぎる
こどもの玩具に少しだけカケラを頂いておこうかと
欲を出して立ち上がると
送迎用マイクロバスが農道脇から顔を出し県道へと向かう
運転しているのは定年退職後にも業務委託契約で不定期の運行だけを任されている個人事業者だと分かる
退職金で購入した電力株価が少しだけ上がったので
気分よくアクセルを吹かしているみたい





「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作


自由詩 杞憂 Copyright あおば 2011-07-13 12:47:56縦
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