風通し
佐藤真夏

夏のおもいでっていうもんが
裸足で踏みしめる畳の網の目につまっていくもんなんやと思って
お風呂上がりにちゃんと足の裏を拭いたり
できるだけ汗をかかんように制汗剤振ったりしよるわけじゃないけど
できるだけあの薄暗い隙間が湿らんように
黴の生えんように気をつけて生活しよる。

前の夏にな、
冷凍庫の引き戸を少しだけ閉め損ねて
そのまま3日間放ったらかしにしてしもたことがあって
そうしたら水が漏れに漏れて
小さい水溜まりがちゃぷんで黴が生えてしもて
畳のなかにおったであろう虫とか何やかやがみんな逃げたか死んだか、そんな感じになったんとちがうかなと思った
そんな虫やらがおったんかどうかも私よく知らんのやけど
畳のなかって隙間だらけで住めそうやし
むしろ日差しとか防げて住み良いんじゃないかなとか思ったりして。

何層にも織り成されとる内なる畳の世界は
公衆トイレのドアの隙間に差し込む程度のひかりの連なりで構成されとるんかなあとか考えよると
ちょうどええ眩しさってどのくらいやろって思うわけで
私の部屋やって、私の内なる世界やって、
ドアの開き加減を調節しながらちょうどええ塩梅になるように明るさとか涼しさとかを調節しよるはずで、結局
どこに黴が生えるのも嫌やけん身体中どこもかしこも風通しよくしておきたいわー、畳みたいに全身スカスカさせてあっちこっちすり抜けながらできるだけ風と同じ質感でおりたいわーって思いながらあくびして寝る。


自由詩 風通し Copyright 佐藤真夏 2011-07-10 14:38:03
notebook Home 戻る  過去 未来