ヒートテックに花束を (朗読用)
あおば

                 110707


古き良き時代を懐かしみ[1]


「ヒートテックに花束を」


プレート損失40ワットでは [2]
寿命1850時間
うーむと唸りながら
真空管アンプを起動する [3]
微かなノイズのあとの
ピアノソナタの確かなリズム
今日も生きているのだと
呟かなくてもよいのだ

1本1500円のソ連製真空管
(ワンカップ大関そっくりの形の) [4]
軍用ГУ-50型 [5]
ドイツ生まれで
第2次世界大戦後
寒い国でも使われた [6]

1850時間÷24時間は約77日
2ヶ月と2週間
あまりにも短いですね
儚い夢ですねと
3本足のトランジスターが慰めて
ICの顔で振り返る
個が消えて
個々が集合化して
顔を変え
ICになり超能力を獲得したと
ユニクロの
ヒートテックも同意する
そこでは
ぬくぬくとあたたかで爽やかで
不思議なことはなにもありません
お金さえあれば
いつものとおりの生活が
いつまでも送れます

その声に
正月の行事は怪訝な顔で振り返り [7]
今までのリズムが取れないよと
走り疲れた箱根駅伝ランナーの苦しそうな顔の
たすきを渡し、崩れ落ちる映像からは
どんな音も感じとれないが
寿命1850時間の束縛のなかでも
絶え間ない振動とリズムの
音のある世界が拡がって
水が無くても
生きていけそうな
気がする



[1]当事者責任回避のため・・。
[2]40ワットが最大定格。
[3]起動させるの意。させるではリズムがとれない・・。
[4]朗読する説明文なので、ワンカップ大関そっくりな格好とは、と書くわけにもいかない・・。
[5]詳しくは、ウィキペディア (Wikipedia)インターネット百科他をご参照下さい。
http://en.wikipedia.org/wiki/GU-50
[6]作られて使われたの意。
[7]初稿は、2011年1月2日、「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。タイトルは、帆かけさん。

古き良き時代、狭義的には、2011年3月11日以前を、広義的には、生々しいリアルな記憶がやや薄れる10日以前ぐらいかと感じております。






ГУ-50型送信機用5極真空管



試作に用いた5球スーパー改造のバラックセット
危ないので、馴れないかたは真似しないでください!



ГУ-50型を3極管接続A級オーディオ増幅器に用いたときの高調波歪み率特性(計測周波数は1キロヘルツ)。
歪み成分は耳に優しい第2次高調波成分が殆どなのでオーディオ用途にも充分使用できそうだ。
パワーがあまりにも小さいのは、電源回路が貧弱なため、電源強化すれば、数倍のパワーが期待できそう。










自由詩 ヒートテックに花束を (朗読用) Copyright あおば 2011-07-07 14:29:39
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