車前草
あおば

                 110616



ものども頭が高い!
恐れ多くも
ここにおわすは
先の副将軍
水戸光圀公であらせられるぞ
印籠を目掛け矢音
目を瞑り横っ飛びに
3回転して立ち上がる
目がふらふらするが
若いから平気、平気と考えた
右足はこむら返り
スニーカーのつま先が空を切る
手も滑り
目の前の車前草すらつかみ損ねてしまったのね
情けないあなたと
場違いなセリフを繰り返す
一面の菜の花
きれいきれい
薄汚いおおばこはこべ
嫌われ者は底なし沼と
囃し立てられ
谷底へ真っ逆さま
ずるずると滑り落ちていく
顔面を打ち付けて気を失った
気がつくと
お供のものどもが
真っ青な顔をしている
傷の手当てをしてもらい
助三郎に命じ
街籠を雇って宿に帰り
忍びの者たちにも
口封じの弐分金を渡す
気の弱そうなものには
壱朱でも構わないと念を押す
財政緊迫の今
お蔵米の横流しだけは許せないと
助太刀に来たのにこの始末
情けない
期待はずれはこりゃ車前草
ずる賢い金貸しの前ではぺったんこ
手も足も出せません
お陰で崖から転落したではないか
ご威光もなんのその
痛い目に会ったよと
お供の格さんは呟いた
好いではないか
また来週に期待しようぜ
さすがに天下の副将軍
にっこりと
金平糖を頬張った







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を修正、タイトルは、小原 明季さん



自由詩 車前草 Copyright あおば 2011-06-16 09:52:41縦
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