鍋を割る
茶殻

鍋を割る

三和土に打ち付けて
引き戸を閉めて

でたらめに跳ねる鍋
鍋はでたらめに跳ねる
跳ねる鍋はでたらめ


悪いのはぜんぶ俺


何者かの妻の握り締めた鍋は孤独なもので生きる、死ぬの隙間を埋めるセメントを煮立てていたのではないかと思うわけである、小指をギプスで固定して生きる私には鍋は優しい、あまりの優しさにいつも歯が落ちてカン、と蓋が響くその音、音。旅にデイパックを連れるとき、それが鍋ではいけないのかと思い詰めても鍋はタオルを詰めても水筒を詰めても不便なものであるので鍋を私は破壊してもいい


ああ 

鍋、鍋

鍋を割る

思うように割れないので

素麺を茹でる


自由詩 鍋を割る Copyright 茶殻 2011-04-28 22:45:24縦
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