か た し て
松岡宮

かたして かたして 

そんな言葉を当たり前のように使っていたのは
もじゃもじゃソテツの木の下で
5歳の頃
ねえ かたして と
はずむ息
同じ団地の友だちを追いかけて
かたして わたしも ねえ
しろつめ草のネックレス
とら猫たちのお散歩道
かたして かたして
スイミングスクールの帰り道
ピンクの長靴に元気があふれている
大濠公園の丘の上で

それから関東に来たわたし
その言葉は関門海峡の向こうに置いてきてしまった
かたして
いや 時に 使うこともある
雑誌とレコードで散らかったお部屋を
ほら かたして と
ため息で
はやく かたして
カラーボックスのぬいぐるみ
引き出しに詰め込んだ鍵つきの日記帳
クラスで気に入らないあの子
苦手な地理と世界史の試験
かたして かたして
重い足取りで階段を上がりながら
枯れ草も 落ち葉も
かたして

そしていま
にぎやかな集団の前で
立ち止まって浮かぶ言葉は
「わたしも仲間に入れてください」
細い息で
「わたしも仲間に入れてください」

それは
鉄と鉛で出来たネックレスみたいな
標準語です


自由詩 か た し て Copyright 松岡宮 2011-04-03 20:32:19
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