アフター
茶殻

書き捨てられた詩の墓に
二人、
言葉にされてしまった実存の愛を
弔いに行く
手を繋ぐ

午前中
フードの影から人を舐めるように見る癖のある僕が
わずかにすれ違う人は
背負っていない もう詩を捨ててきたのだ
駅で誰もが顔をしかめている
煩わしい詩が痰に絡んでいる

///

バケツに水を汲み
乾ききった石を着古したシャツで拭う
本当にデリケートなんだ
次 ここに来ても
もういないかもしれない
この子たちが、僕らのせい/おかげで
こんな風にしていると
そのことが今でも
家族の会話を
ぎこちなくしている そんな気がする
 そうやってあなたは人のせいにする
あなたの笑みを
また掌を構えるのが遅すぎて

花のない 煙のない墓で
饅頭もない
立地の悪さから
輩の騒がしさもない
物分かりのいい子から
さよなら、ということを知り、理解し
適当な落ち度で
傷を抉り
季節の変わり目に消える

///

帰り際
単館上映のドキュメンタリを観る
また僕は
痒くなる

まだ僕は何も言わない
口を開くと
胃液のように
詩がせり上がる

僕に
詩を書くことしか/すら
できないと
ずっと
手に嘘をついている


自由詩 アフター Copyright 茶殻 2011-03-16 16:40:36
notebook Home 戻る  過去 未来