チャリティ朗読会の夜
服部 剛

 今夜のチャリティ朗読会を終えた僕は、家路に着く夜遅い電車に乗りながら、今夜Ben’sCafeに皆で集った「チャリティ朗読会」の意味を、感じていました。
 朗読会を終えて、ジュテーム北村さんがかたい握手をしてくれた時、(この朗読会をやった意味があった・・・)と思えました。また、テレビ等でも節電を呼びかけている状況から「今日はマイク・音楽なしで」というアイディアをくれた人がいて、今夜は皆肉声で詩を読み、それぞれに今回の地震で感じたことを語り、聴いている皆も耳を傾けて共有する雰囲気になりました。 

 Ben’sでチャリティを行うと聞いて駆けつけてくれたアメリカ人の女性の方の弾き語りや、1部のトリの平本閣さんの朗読・ギターユニットは、廃墟の街での路上ライブを彷彿させるような、雰囲気を感じました。 
 平本さんの(残ったものを握り締め、それでも僕等は前進するのだ)という魂の叫びは、今夜も大変な状況の被災地の皆様の思いと重なるようで、また、それぞれの日常の物語を歩む詩の仲間の僕等をも励ましてくれる、素晴らしい朗読でした。 

 ゲストの後藤理絵さんは「動」と「静」のどちらの朗読もできる詩人ですが、今夜は「静」の朗読で、静かに語る詩の言葉から、緊張感を感じました。坂本九の「上を向いて歩こう」の歌詞等を引用しながら、今の状況にあう詩を選び、今夜の詩の夜の雰囲気をつくってくれました。 

 2部のトリでは初参加の人が、現在は東京に住んでいながら故郷の福島の街が津波に襲われ、大事な叔母さんが今も行方不明だという、切迫した状況を勇気を出して語ってくれた時、今回の地震の深い哀しみを、Ben’sの詩の夜に集う皆が受け止め、共有する雰囲気に包まれました。 

 僕は安易に慰める言葉を見つけられませんでしたが、彼女に(ありがとう・・・ここには話せる仲間がいます)ということのみを、伝えさせていただきました。 

 rabbitfhighterさんは、そんな流れを受けた即興で(灯を絶やしてはいけない・・・)と繰り返し静かに語ると、皆の胸にいのちの灯が視える気がしました。そして・・・(それぞれの蝋燭の灯を絶やさぬように、大事に両手で囲む)という素晴らしい詩情が皆に伝わる、rabbitfigterさんの朗読でした。 

 今回の「チャリティ朗読会」のトリは猫道さんにお願いしました。昨年9月の「ぽえとりー劇場」で仙台から駆けつけて、庶民的な胸に残る詩を読んでくれた詩友の連絡が取れることを願い、遠い空の下にいる人への思いを語る詩を読んでくれました。また、茨城に住むフミタケさん・モリマサ公さん・マノメさんと無事連絡が取れたことを、皆に報告してくれました。 

 帰りの駅まで車で迎えに来てくれた嫁さんから「明日から計画停電になるのよ」と聞いて「被災地の皆様の状況を思えば、僕等も知恵を出し合って、協力していかなきゃね・・・」と、話しあいました。 

 僕等はそれぞれの生活もあり、被災地にボランティアにいくことのできない人が多いと思いますが、今夜Ben’sに集った皆の声援として、募金を被災地に送ることには微力ながらも、何かの意味を感じます。そして、「チャリティ朗読会」で僕等は(共有すべき何か)を、それぞれの胸に刻んだことを、感じる詩の夜になりました。 

 計画停電のことを考えると、詩の仲間にも無理には進められないながらも、このチャリティ朗読会の和を、詩の仲間の垣根を越えて広げてゆくことは、詩を愛する僕等にできることかもしれない・・・と感じています。すでに2週間後のBen’s第4週のSLAMでも、主宰のrabbitfigterさんがチャリティ朗読会を行うことを今夜皆に告げて、猫道さんも御自身のイベントをチャリティにする等、それぞれの皆さんが自発的に動き始めています。  

 改めて、今夜の「チャリティ朗読会」に集まってくださった皆様、関心を寄せてくださった皆様に、心から感謝申し上げます。僕はまず自分の家族と知恵を出しあい、今の状況を皆で乗り越えたいと思います。その勇気の波動を、今夜Ben’sに集まった皆様がつくってくれました。そして、何よりも大変な状況の中を過ごしている被災者の皆様が、徐々に復興へと近づきますように・・・心から、お祈り申し上げます。 








散文(批評随筆小説等) チャリティ朗読会の夜 Copyright 服部 剛 2011-03-14 02:16:06縦
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