(自己紹介のかわりに)
古溝真一郎
俺は時計を持たない営業部員でつまり仕事ができない
もらい物の手帳に不明瞭な単語だけ書きつらねて
昼間を秋葉原で過ごし歌舞伎町に立ち寄ってとにかく帰ってくる
今日は何本のエロビデオを店に突っ込んだか
それだけで満たされる腹ひとつのための横すべりな日々を
暗い情熱だけで過ごしていく28歳のあるがままの顔と身体
174センチ58キロのポッキーが道端に刺さっている(詩的に)
信号待ちの俺の鞄には夢が詰まっている
55歳の銀座のママを32歳の常連客が犯すという夢
蔵の中に幽閉された実の母と20年振りに再会し愛しさのあまり性交する夢
37歳の女にもう一度処女膜を縫合してすぐに破ってしまう夢
俺は男達の夢を叶えるために日夜エロビデオ屋を巡っては断られつづけている
妊娠線のある女とセックスしたい男達のために
騎乗位でつながりながら女の母乳を飲みたい男達のために
俺はくじけない 射精したあとに優しいため息をつく中年男のあるがままの夢のために
俺は一着しかスーツを持たない営業部員つまり仕事はできない
セックスは詩だ、セックスは金になる、だから詩は金になるんだと断言して憚らない
たった1度の発射の度に2000円儲かるのならば
1篇の詩で世界を無限大にできるらしい詩人ならばいくら儲かるだろうか
俺はそのことばかり考えていてつまり仕事ができないのだ