こしごえ





私は、
有形の門を通りすぎ透けた暗さ
届かぬところへしみる幽かな終止符
行方知れずの墓
墓標は名無しの波止場
船は無人で行き交う汽笛
宙をつかんだこぶしをひらいて
手をふりつづける 永さ
私の時は、その光にみつめられている

限り無く終わりつらなる
ささやきに耳をかたむければ
丸い水平に直立する石造りの
時計台はしろがねの鐘を鳴らす
ひんやりとかたい産声の響く晴空へ
黒く大きい蝶がしのびやかに消えていった

ふりかえり帰りつくことの出来ない夜空
時は、待ってはくれない。
林の陰の道にある
水たまりに映っている影に
しずくは落ちて 落ちて
波紋はゆれて ゆれて
予測不能な運命を
進む 影無き影
私は誰か、と問えば
うしなわれてしまう
鏡を割る、時間

入り組んだ小道を
冷たい月影は照らす
冷えた小道に落ちる
   空の闇に銀糸の道化
   はようねむれむかえにくるぞ
白目むきいそぎなさるな、とそよぐすすき
みわけみつけられず(己の影とも夜の闇とも
あきらめよう、としたとたん
ひらきはじめた扉重く 重くきしむ
影独り くぐり






















自由詩Copyright こしごえ 2011-03-01 07:57:06
notebook Home 戻る